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「日本は破綻する」
「ハイパーインフレになる」
「金を買え」
このようなありもしないトンデモ論が以前は蔓延っていましたが、しかし、もうこんなデタラメ論を言っても信じる人もいないだろう、と思っていました。なにせ、全て論理的に根拠のないデタラメなのですから。しかし、先日ニューズウィークからこのような記事が出ていました。

「日本は年内破綻も」という藤巻健史氏、「破綻は早いほうがまし」というのは本当か? | 冷泉彰彦 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

本記事は、藤巻健史(フジマキ・ジャパン社長)氏が
  • アベノミクスの財政政策によって、年内の破綻もありうる
と述べたのに対する批判論として、ジャーナリストの冷泉彰彦氏が主張を展開するというもの。しかし、この記事は二重、三重の意味で間違いがあり、悪質です。

まず、冷泉氏は藤巻氏の主張とは一線を画しているように見せかけています。しかし、主張の内容を精査して読めば(精査して読まなくても)はどちらも同じなのですね。これはそもそもの論点である、財政破綻論、ハイパーインフレ論が根拠のない主張なので、そこから派生するものは全て成り立たない、机上の空論というわけです。

しかし、その重要な前提条件を さも当然起こる現象かのように話を展開し、読者におかしな印象を与えている。これが非常に悪質です。このあたりはさすが新古典派経済学に影響を受けた人たちだけあって、修辞学だけはきちんと心得ていらっしゃるのかもしれません。構造的には「小泉自民党を批判した民主党」「民主党を批判した維新の会」と同じですね。どちらも構造改革派という点で同じ穴のムジナです。

では、この間違った主張を読者はどう受け止めているのでしょうか?例えば、「はてなブックマーク」のコメントを見ればわかります。

「財政規律を無視して借金を煽る借金中毒・借金依存症・借金ジャンキーのスットコドッコイどもって、なんで「日本人の持つ個人資産は日本国の資産」みたいな、アッパラパラパラパーなアホウ感覚が根底にあるの?」
「と、金持ちの立場で言ってます。逆に大きすぎて潰すに潰せないのならどっかの国みたいに経済を逆手に取って瀬戸際外交できるんじゃないの?」
「きわめて現実的な未来観。」
「最悪の方向に進んでいるのかも。アベノミクスの先に」
「年明けたばっかりだから年内と言われてもな〜」
「そりゃーいつかは破綻するだろうけど・・・人間はいつか必ず死ぬって言ってるのと同じじゃないのかね。」
「『財政規律の回復』など破綻しないとできない。自民党に政権を任せておくと、破綻するまでバラマキを続ける。」
「破たんするかしないかじゃなくて、破たんすればすっきりするってのが誤りだってのが論旨なのでそこをお間違えなきよう。」


余談ですが、はてなブックマークはインターネット上に最も衆愚化が進んだメディアはではないかと思います。はてブで盛り上がっている話題は、ほとんど大手メディアの報道とリンクしています。

いずれにせよ、こうした間違った財政破綻論やハイパーインフレ論を真に受けてしまう人はいまだ多い。と、前置きが長くなりましたがこれから財政破綻が起きない理由を4つ述べます。


日本国債は99%が円建てで95%が国内で消化

日本の国債は99%が円建てです。つまり、仮に通貨が暴落しても(現状では考えにくいですが)、円建てなんですから日銀で円を刷って返せば良いわけです。

これが例えば、ドル建てやユーロ建てなどであれば話は変わります。もし自国通貨が暴落した場合、ドルに両替して時に暴落した分だけ両替できる分は目減りするわけですよね。そうなるといくら円を刷っても足りないという状況になってしまいます。

ちなみに日本の国債の95%は国内で消化されています。外国からお金を借りているわけではないので、債務を強行的に迫られたり、ギリシアなどのように緊縮財政を押し付けられることもなく、日本の国債は非常に安心なのです。

通貨発行権を持っている

日本は通貨発行権を持っています。円を刷ることができるわけですね。ですから、先程も述べた通り、円を刷って返すという荒業も可能なわけですね。

これがユーロであればECB(欧州中央銀行)が通貨発行権を持つので、ギリシアがユーロを発行することはできません。


お金は消えない

財政破綻論者はよく「日本の借金は一人あたり700万円になる!」「孫や子供に借金を残すのか!」「日本の借金が1000兆円を超えた!」「日本の借金はGDP比で200%を超えた!」などと言われます。だから今にも破綻するんじゃないか、と。でも、本当にそうでしょうか?

そもそも借金には必ず貸し手がいます。日本の借金は、政府の借金です。貸しているのは誰か?主には日本の銀行です。銀行は誰に借りているのかというと、国民ですね。つまり、国民は債権者なんです。だから、借金を国民一人あたりで割るというのもおかしな話なわけで、孫や子に借金を残すという話でもないのです。


資金需要がない

今はデフレです。デフレということは、物の価値が下がり、通貨の価値が上がるわけですね。ということはお金を持っていれば、それだけで得するということです。だから、お金を使わなくなる。つまり投資をしなくなるというわけですね。

さらに、デフレだと銀行の実質金利も上がります。今はほぼ0に近い長期金利ですが、実質的にはいざ返済するときに、お金の価値が上がっていると、借りた時よりもたくさん返すはめになるわけですね。

だから、デフレによって民間が投資をしなくなるわけです。投資をしなければ、銀行からお金を借りる必要もない。銀行の貯蓄は今、どんどん増えていっています。

銀行も預金者には利子を払っていますから、預金をどこかで運用しなければならない。しかし、民間はお金を借りなくなっている。だから、日本の国債を買うわけですね。だから、国債が暴落するというのは現状では原理的にありえない。

ただ、デフレは人々の生活を痛めつけますから、一刻もはやくこの状況を抜けださなければいけません。

先ほど民間が投資しないと言いましたが、デフレの元凶はそこにあるわけです。いくらマネーサプライを増やしてもマネタリーベースは上がらない。これが続くとデフレスパイラルから抜け出すことができません。

だから、代わりに政府が民間の代わりに財政出動を行うわけです。民間がお金を使わないから、その穴埋めとして政府がお金を使うわけですね。そうなると、また無駄使いだとか言われるんですが、民間の代わりに財政出動をしデフレ脱却出来れば、GDPは増えていくことになります。

GDPが増え、マイルドなインフレが実現すれば、税収も増えますし、政府が財政出動しなくても民間が代わりに投資を始めることになります。となれば、政府の代わりに民間が借金を増やし、政府の借金が減っていく。

だから、今の状況を抜け出すにはアベノミクスで言われている、金融政策と財政政策のセットでデフレに立ち向かっていかなければいけません。こんなことはノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンも自著「さっさと不況を終わらせろ」で言っていることですし、はっきり言って世界の常識です。

にも関わらず、いまだ日本では論理的にデタラメだらけの財政破綻論などが横行しているわけです。本当にいい加減にして欲しいですね。
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